第30章 熱帯夜【逆ハー】
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「なぁ、トッティ。本当にこの島だったか……?」
砂浜に下りたカラ松さんがあたりを見回した。
「う〜ん、なんか違う気もする……」
不安そうなトド松さん。
「ま、いーじゃん! 島には変わりないんだからさぁ! 早く行こうぜ!」
おそ松さんは気にせず、上機嫌で走りだす。
ボートで出発してから15分。
私たちは小さな島に辿りついていた。
行こうとしていた場所は、無人島といっても観光用に開発された島だった。
でも、私たちが着いたこの島はどうも様子が違う。木々が生い茂り、観光用というより、自然そのもの。案内で見た写真とは違う気がする。
「間違えて別の島に来たのかもね……」
一松さんがのろのろと歩きだし、十四松さんは荷物を下ろす。
「とりあえず、島を少し見てみようよ」
チョロ松さんの提案で私たちは歩くことにした。
草をかき分け進むと、道はなくどこまでも森が続いている。歩けば歩くほど、何もないことがわかってきた。
「つーか、ほんとジャングルじゃん……やばくね?」
おそ松さんもさすがに少し不安そう。
「ねぇ、あそこに咲いてる花。見覚えあるよね? なんだっけ?」
トド松さんが小さな泉の向こうを指さす。
白い花が一面に咲いていた。
「わあ、きれい! 何の花なんですか?」
私の言葉に六つ子たちは首をひねった。
「見たことあったっけ?」
「んー、わっかんない! 覚えがあるような気もするけど……」
「なあ、花はもういいじゃん。とりあえずボートまで戻らね? これ以上いくと帰り道がわからなくなりそう」
迷う前に私たちは砂浜まで引きかえす。戻ってみると、荷物はあったがボートは見当たらなかった。
「ちょっと! ボートないんだけど!? ちゃんと固定した!?」
トド松さんが大声を出す。
「俺してな〜い」
「フッ、オレもしていないな」
「僕はしてないよ? 誰にも言われなかったしね」
「おれ……知らない……」
「あっは! 荷物は下ろした!」
私もうなだれた。
「ごめんなさい……私もしてないです……」