第30章 熱帯夜【逆ハー】
「なぁなぁ、愛菜ちゃんは彼氏いないの?」
おそ松さんが砂を弄りだした。
「いないです」
残念だけど本当の話。だいたい彼氏がいたら友達と海になんて来ないし。
「なんで? 仕事でいい人いないの?」
「女性の多い会社だから、なかなか出会いがなくて」
「へぇ〜」
目の前をカップルが通りすぎていく。手を繋いで楽しそうだ。本当にみんなどこで出会ってるんだろ?
「おそ松さんは?」
「ん? 俺? 彼女なんていないよぉ。あ、無人島行くのやめて俺と二人でホテルで結合しちゃう? あいつら戻ってくる前に行けば大丈夫だからさぁ。俺、童貞だけど乳首から水飛ばせるよ? 二人きりでなら特別に見せてあげてもいいけど、どう?」
瞬間、おそ松さんの頭にボートが勢いよく振りおろされた。
「っ!? おそ松さん!?」
下敷きになった彼の頭に容赦なくボートの先端がぐりぐり押しつけられる。
「ったく、なんで愛菜ちゃんを連れていこうとしてんだよ! だから、二人きりにするのは嫌だったんだ!」
「コロース!」
チョロ松さんと十四松さんがイライラした表情で立っていた。
「あ! ボートを借りてきてくれたんですか?」
「うん。愛菜ちゃんはもうこいつに近づかないで。バカがうつるから」
ボートの下から這いだしてきたおそ松さんが頭を押さえる。
「いててて……。なんだよ〜! ちょっと愛菜ちゃんとオハナシしてただけだろ〜?」
「オハナシというか、セクロスしようとしてたよねぇ……」
十四松さんがジトッと睨むとうしろから、
「愛菜ちゃ〜ん! 買ってきたよ〜!」
トド松さんとカラ松さんが両手にビニル袋をさげて、走ってきた。