第30章 熱帯夜【逆ハー】
「ほ、ほら、すぐ近くに小さな島もあるみたいだし! ボート借りて遊びに行くとか……」
険悪なムードに耐えられなくて、適当に思いついたことを言ってみる。
一瞬、沈黙があったあと、
「「「「「「それだー!!」」」」」」
六人が叫んだ。
「別にどうしても行きたいとかじゃなくて、たとえばの話なんですけどっ」
私の言葉を無視して、海から慌ただしく上がる六人。輪になって話しはじめた。コソコソ喋っているわりには、声が大きいから筒抜けだ。
「トッティがスタバァの女の子たちと行こうとした島だろ? たしか無人島だったよな?」
「迂闊だったぜ! そんなワンダフルなアイランドがあることを忘れていたとは! すぐボートだ! オレが借りてこよう」
「ねぇカラ松、ついでに食料も買ってきてよ」
「クソ松……日よけのテントも……」
「カラ松兄さん、野球道具も!」
「ちょっとちょっと! カラ松兄さんに全部頼みたいところだけど、さすがに時間かかりそうじゃない!? 手分けしよう」
この間わずか10秒。なにやら役割分担をしているみたい。
「……よしっ、決まったな。んじゃ、すぐに準備!」
「「「「「了解!」」」」」
五人がどこかに走りだし、残ったおそ松さんがニヤニヤしながら歩いてきた。
「みんなはどうしたんですか?」
「あいつらのことは気にしなくていいよ〜。ボート借りに行ったから、愛菜ちゃんはここで待ってて。あと、食べ物買いに行ったり、薬局行ったり」
「薬局? 誰か怪我してるんですか?」
「ん、まあ、そんなとこだな」
思いつきで言っただけなのにな〜、大ごとになってきちゃったかも。
砂浜に座りこんだおそ松さんの隣に腰をおろす。
打ちよせる波の音が気持ちいい。