第30章 熱帯夜【逆ハー】
「なぁなぁ、愛菜ちゃん! ここ深いからさぁ、俺に掴まりなよぉ」
海中でおそ松さんがくっついてくる。
「大丈夫です。足つかなくても平気なので」
「おそ松兄さんの言うとおりだよ! 油断したら危ないんだよ! 海は危険なんだ! さ、僕に掴まって!」
チョロ松さんも私を引っ張った。
「カラ松ガールよ、掴まるならこのオレに!」
「黙れ、クソ松。掴まるならゴミなおれを使えばいい……」
「あはー! ぼくが一番! 愛菜ちゃん、掴まって!」
トド松さんがみんなを見回す。
「じゃあ、交代で順番に掴まれば? みんな平等でしょ?」
「「「「「賛成!!」」」」」
全員声が揃った。
「あの、だから別に掴まらなくても平気なんですけど……」
「まずは長男の俺からね! ほらほら、愛菜ちゃん危ないよ!」
さっきから私の言葉、無視されてる……。
海で遊ぶはずが、なぜか六人の男性にぴったりと囲まれた状態。これじゃ、何もできない。
「なあなあ、愛菜ちゃん! おっぱい大きいね〜。危ないからもっとくっついたほうがいいよぉ」
おそ松さんがニヤニヤしながら背中に手を回してくる。つうっとお尻まで撫でられた。
「ひゃ!? あの、おそ松さん! 別に大丈夫なので!」
「おそ松、交代だ。カラ松ガールよ、オレの肩に掴まってくれ!」
あっという間に引き剥がされ、今度はカラ松さんに抱きしめられる。彼の裸の胸板にぐにゅと私の膨らみが押し潰された。
「きゃあ! カラ松さん! これもう肩に掴まっているというか、完全に抱き合ってますよね!?」
「フッ、世間では確かにこの行為を『抱き合う』と言うのかもしれないな。しかし、松野カラ松の辞書ではそんなありふれた言葉は使わない。抱き合っているのではなく、『美しきバタフライがオレの肩で少し羽を休めているだけ』、オレはそう定義している」
意味がまったく分からない。