第30章 熱帯夜【逆ハー】
「クミ、ミワ、ごめん。私、この人たちともう少し話していたいかも」
私の言葉にクミとミワがぽかんと口を開けた。
「え!? でも、明らかにその人たちより……」
「うん。分かってる。ごめん」
クミとミワは困ったように顔を見合わせていたが、やがて頷いてくれた。
「分かったよ。愛菜の好きなようにしな。まあ、こっちも男ふたりしかいないし、ちょうどいいかもね」
「うんうん。遊べるのはいつでも遊べるしね! じゃあ、ここからはとりあえず別行動で! お互い健闘を祈る!」
行こう、と言いながら去っていくクミとミワ。
思い切って言っちゃった。これでよかったよね……?
ホッと息をつきながら振り向くと、今度は六つ子の皆さんがぽかんとしていた。
「え? 何? 今、何が起こったの?」
おそ松さんが呆然としながら言葉を漏らす。
「フッ、どうやらミラクルが起こったようだな」
「愛菜ちゃん、友達は大丈夫だったの!?」
チョロ松さんの言葉に私は頷いた。
「もう少し皆さんとお話ししたいなと思ったんですけど、だめですか?」
「「「「「「だめじゃないっ!」」」」」」
また六人揃った。
「ヤバイ……幸せ借金がかさむ……。これ、あとからが怖いやつだ……」
一松さんが震えだした。
「あはっ! 一松兄さん、今のうちに戒めしておく!?」
「頼む、十四松……」
「戒め――」
「ね、ねぇ! こんなところで立ち話もなんだし、みんなで遊ぼうよ! ね!? 愛菜ちゃんの気が変わらないうちに!」
十四松さんを遮って、トド松さんが海を指差した。
「「「「「確かに!!」」」」」
他の五人が一斉に声を上げる。
「私、別に気なんて変わらないけど……」
「いいから! 早く行こう!」
トド松さんに手を引っ張られる。
「あっ! おい、トッティ! 何、愛菜ちゃんと手を繋いでんだよ! だったら、俺も繋ぐ!」
もう片方の手をおそ松さんに掴まれた。
「え!? あの!? ちょっと待っ――」
ふたりに引っ張られ、私は仕方なく走り出す。
あっという間に六人と一緒に海に入ることになってしまった。