第30章 熱帯夜【逆ハー】
「一松兄さん、そんな言い方だめだよ! せっかく声かけてくれたのに逃げちゃったらどうするの!? このチャンスを逃したらもうあとがないんだからね!? あはっ、ごめんね〜! この兄さん、ちょっと自虐がすごくて。気にしないでねっ」
ピンクの水着の男性が慌てたように笑いかけてきた。
「はい……あの、皆さん、お名前は何ていうんですか? やっぱり一郎、次郎、三郎、四郎、五郎、六郎?」
「「「「「「違うよ!!」」」」」」
六人が同時に叫ぶ。
さすが六つ子。息がぴったりだ。
「そんな古風な名前なわけないだろ! まあ、松も充分変な名前だけど」
緑の男性がため息をつく。
「ぼくたちの名前はねー、向こうから順番におそ松兄さん、カラ松兄さん、チョロ松兄さん、一松兄さん、こっちがトド松、ぼくが十四松!」
浮き輪をつけた男性が人懐っこい笑みを浮かべた。
「おそ松さん、カラ松さん、チョロ松さん……」
忘れないように復唱。
「みんなまとめてクソって呼んでくれればいいよ……」
「だから、一松兄さん! そういうこと言っちゃだめだってば!」
今、突っ込んだのはトド松さんか。たぶん、覚えた……たぶん。
「ねぇねぇ〜、愛菜ちゃんはひとりで来たの?」
おそ松さんが話題を変える。
「友達ふたりも一緒です」
「「「「「「っ!!」」」」」」
瞬間、六人の目が光った。
「女の子三人組!? マジで当たりじゃん! なあなあ、そのコたちも呼んでよ。みんなで遊ぼうぜ?」
「でも、今ふたりは食事に行ってて……」
海の家のほうを見ると、タイミングよくクミとミワが出てきた。
「おおっ! あのガールズか!?」
カラ松さんがサングラスを取って、ふたりを眺める。