第28章 キミと浴衣で花火デート【おそ松/デート松】
「おそ松くん、もしかして、さっきの聞こえてたの?」
「聞こえてた」
花火が次々と打ち上がる。休みなく広い空に光が描かれた。夏の夜を色とりどりに染めていくスターマイン。
おそ松くんが私の手を握る。私も強く握り返す。
来年も再来年もずっとずっとずーっと一緒だよ。
瞬間、大輪の菊が空いっぱいに咲いた。遅れて体に響く音。最後の花火。
やがて、金色の花弁が夜空に長く垂れ下がり、花火はゆっくりと瞬きながら消えていった。
風に乗って、火薬の匂いが鼻をかすめる。暗い空を流れていく煙。虫の声が大きくなった気がした。
「行くか……」
「うん……」
二人同時に立ち上がる。離れて座っていた他のカップルも一組、二組……と帰り始めた。
「なかなかいい場所だったよな〜。人も少なくて花火も目の前だったし。穴場っていうの? 来年もここに決まりだな」
歩き始めたおそ松くんが満足そうに笑う。
来年も来ること決定なんだ。嬉しい。顔がにやけてしまう。
「おそ松くん、手をつなご?」
「ん」
すぐに私の手を取る彼。まるで手を繋ぐのなんて当たり前とでも言うように。思わずドキッとしてしまう。
「帰りの電車、混むかなぁ?」
「あ〜それな。混むだろうな〜。すぐには乗れねぇかもな」
海を見ながら暗い道を歩く。おそ松くんがふと立ち止まった。
「おそ松くん、どうしたの? 足痛い?」
「なぁ、愛菜……」
「?」
俯いていた彼が、顔を上げる。