第28章 キミと浴衣で花火デート【おそ松/デート松】
「もう少し貰ってもいい?」
「いいよいいよ! よしっ、お兄ちゃんがもっと食べさせてあげよう。あ、口移しがいい? って、溶けちゃうか」
おそ松くんがまた氷をすくって食べさせてくれる。もちろん、口じゃなくてスプーンストローで。
「次は私の番ね。あ〜ん」
「あ〜ん」
次々と流れていく浴衣の人たちを見ながら、私たちはかき氷を順に食べさせあう。かき氷がなくなる頃には身体も冷え、汗も消えていた。
「美味しかったね〜」
「だな〜。でも、かき氷は口移しできないからさ〜」
「おそ松くん、まだ言ってるの。もう〜」
こんな会話をしてるけど、私たちはまだキスもしたことない。おそ松くんも口では色々言うわりに手を出してくる気配もない。案外、彼って奥手なのだ。
おそ松くんと付き合うことになった時に、友達には「え〜!? 高校のとき同じクラスだった松野おそ松!? あの人、軽そうなのに大丈夫!?」なんて心配されたけど、彼は本当は軽くなんてない。
本当のおそ松くんは私しか知らないんだもん……なんてね。
でも、そろそろキスしたいかなあ。おそ松くん、いつもフザケてるから、なかなかそんなムードにはならないけど……。
「なぁなぁ、あとで他のものも買っていこうぜ。ここで見る人も多いみたいだけど、できれば港ギリギリの一番近いところで見たいしさ」
おそ松くんが海の方を指差す。
「うんっ。すぐ近くまで行くのって、結構歩くかな?」
「そうだな〜会場といってもここは打ち上げ場所からは離れてるからな。少しあるかもな」
日が落ちてきた。海の方からドーンと大きな音。花火の試し打ちをしているようだ。花火客もますます増えてきた。