第28章 キミと浴衣で花火デート【おそ松/デート松】
《愛菜side》
「うわぁ、すごい人だね」
私は周りを見回した。赤塚港の会場はすでに人でいっぱいだ。家族連れもいれば、カップルもいる。
キョロキョロしていると、おそ松くんに手をぐっと引っ張られた。
「ほら、こっち。ちゃんと繋いでおけよ? はぐれても知らねぇからな」
「うん……」
おそ松くんの男らしい表情にドキッとする。普段フラフラしてるけど、イザという時頼りになるこの感じ……好き。
「ん? なに、赤くなってんの? あれ、手を引っ張ったら、もしかして感じちゃった? 濡れちゃったか、お兄ちゃんが触って確かめてやろうか?」
「違うよ! もう!」
ニヤニヤしながら着物の裾に手を伸ばすおそ松くん。ぴしゃりと叩き落とすと、「チェッ」と不満そうに口を尖らせる。
「なんだよ〜浴衣が濡れたら大変だから、俺が拭いてやろうと思ったのにさ」
「濡れてないからっ!」
瞬間、おそ松くんが急に私を引き寄せた。耳元でそっと囁く。
「んじゃ、愛菜はどういう時に濡れるの……? 俺に教えてよ……」
「えっ……」
心臓が音を立てる。
今、ちょっと濡れました……。
「なんてな〜ヘヘッ」
おそ松くんはすぐに離れ、照れ臭そうに鼻の下を擦った。
「もう……ばか……」
わざとなのか自然になのか、おそ松くんはたまにこうやってドキッとさせてくるから心臓に悪い。
話の内容は下ネタばっかりだけど。
「愛菜、とりあえずなんか食べない? 俺、お腹空いちゃった」
おそ松くんは賑やかな屋台のほうへ歩き出す。