第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
「もうっ、お兄さん、怪力すぎ。潰れちゃうよ」
「え……ごめん……というか、あれー? なんで本物の愛菜ちゃんがいるのー?」
不思議そうに見てくるお兄さん。
「一人で寝るの心細くて。ここで寝てもいいでしょ?」
お兄さんは困ったように寝ている5人をちらりと見た。
「んー、いいけど……ぼく、寝相悪いよ?」
「うん、知ってる」
「あはっ! そっかー。じゃあ、とりあえず寝よー」
眠くて考えるのを放棄したのか、お兄さんは再び枕に頭を沈めた。
「ねぇ、お兄さん」
「んー?」
「お兄さんは明日も公園にいるの……?」
お兄さんは眠そうな目を擦りながらも、少し考える。
「んー、愛菜ちゃんが行くなら、ぼくも行く。だから、もう男の人と待ち合わせしちゃだめ! お金もあげるし」
「お金はいいよ……なんかこのまま貰ってたら私、酷いやつじゃん。今日の3万も返すから」
「なんでー? 今日だって家に来てくれたし!」
「う〜ん、でも大したことしてないし……」
「あは! 大丈夫! 愛菜ちゃんが楽しかったなら!」
「…………」
お兄さんは欠伸をしながら、目を瞑る。
また降り出した雨が屋根のひさしに当たる音が聞こえた。
「お兄さん、ありがと」
小さく呟くと、聞こえてしまったのかまた目を開ける。
「んー……何が……?」
「今日も公園にいてくれて」
「あっは! あんなに怒ってたくせに」
確かに。でも、怒るのもセットだから。