第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
《愛菜side》
規則正しい時計の音。暗闇の中で私は起き上がった。
「やっぱり寝れない……」
お兄さんたちと、はしゃすぎたかな。でも、楽しかった。寝る前までみんなでわいわい楽しんで、修学旅行みたいで。
本当はみんなと一緒の部屋で寝たかった。良くないのはさすがに分かっている。でも、なぁ……。
暗い和室を見回す。タンス、小さな机、姿見……置いてあるものは普通だが、真っ暗な知らない部屋にいるのはやっぱり心細い。
「少しだけなら、怒られないよね……」
私は枕を持つと、静かに部屋を出た。音を立てないように襖を閉める。真っ暗な廊下を数歩進み、隣の部屋へ。そっと中に入る。
「うわ……すごい……」
大きな布団に本当に6人が並んで寝ていた。同じ顔に同じパジャマ、もう見分けがほとんどつかない。
確か十四松お兄さんは一番端って言ってたよね……。
足音を忍ばせてお兄さんの傍に行くと、ほとんどスペースはなかった。
ま、無理矢理でいっか。
強引にお兄さんの枕を押して、自分の枕を置く。
「んっんー……」
お兄さんが寝返りをうった。手足を布団の外に投げ出して、体も斜めだし、入りにくいなぁ、もう。
「お邪魔しまーす」
お兄さんの隣に何とか潜り込むことに成功。
ふぅ……ちょっと暑いけど……落ち着く……。あぁ、人がすぐ近くにいてくれるっていいなあ。やっぱり、ここで寝よう。
十四松お兄さんのぬくもり(寝相は悪いけど)を感じながら、私はうとうとと眠りについた。
・・・
ん? あれ?
なんか苦しい……?
「愛菜ちゃーん……」
十四松お兄さんの甘えた声がすぐ近くで聞こえた。
目を開けると、私はお兄さんの腕の中。抱き枕みたいにしがみつかれている。