第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
《十四松side》
「はいっ! 枕投げやめっ! 勝者は愛菜!」
おそ松兄さんの審判にみんな動きを止めた。
布団の上で枕まみれになって転がる愛菜とチョロ松兄さん。
なぜか『シコ松中』の看板の下敷きになってノビているカラ松兄さん。
部屋の隅で膝を抱えつつも愛菜から目を離さない一松兄さん。
一生懸命スマホで撮影しているトド松。
そして、ぼくはトド松の横で愛菜の応援。
「いやいやいや、おそ松兄さん、勝ちの基準が全く分からないんだけど」
不満そうにチョロ松兄さんが起き上がった。
「じゃあ、もう一回勝負する? シコ松お兄さん?」
愛菜も楽しそうに身体を起こす。
「シコ松じゃなくて、チョロ松! てか、誰だよ、変な呼び方教えたの! 女の子に言わせちゃだめだろ!」
おそ松兄さんが愛菜を覗き込んだ。
「なあなあ、愛菜ちゃん! 今度は俺と勝負しようぜ?」
「うん! いいよ! ゲス松お兄さん!」
笑顔で答える愛菜。
「ゲ、ゲス松……? くっ! チョロ松! お前、変な呼び方教えただろ!」
「人のこと言えるの? 先にシコ松って教えたの、どうせおそ松兄さんだろ……」
銭湯から帰ってきたあと、ぼくらの部屋では愛菜と一緒にトーナメント制の松野家枕投げ大会が繰り広げられていた。
愛菜は嬉々として、みんなに枕をぶつけて回り、とうとうチョロ松兄さんとの決勝戦で勝利を収めてしまった。
……ほとんどおそ松兄さんの勝手なジャッジだけど。