第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
お母さんがいいと言ってくれるなら、いいかも。寝るまで誰かと喋ったりできるなんて、考えるだけでわくわくする。
「じゃあ、泊まろうかな……」
「「「「「っ!!」」」」」
呟いた瞬間、5人のお兄さんたちが箸と茶碗を持ったまま、一斉に天井に突き刺さった。
「きゃっ!? お兄さんたち、どうしたの!?」
「あはー! 気にしないでいいよー! 兄さんたち、喜んでるから」
黄色のお兄さんが平然と答える。
「よ、喜んでる……??」
どこが……? 血が出てるけど!? っていうか、どうやって刺さったの!?
「こらっ! ニートたち! 何やってんの! ご飯こぼれちゃってるじゃない! 自分たちで片付けなさいよ!」
すかさずお母さんの声が台所から飛んできた。
注意するところ、そこ!?
「あはー! ぼくたちはこの後、銭湯に行くけど、愛菜ちゃんは家のお風呂に入ればいいよ! 帰ってきたら、みんなで遊ぼー!」
黄色のお兄さんに満面の笑みで言われ、トクンと胸が鳴った。公園で会ったときから、そう。やっぱり、お兄さんは私のことをちゃんと気にかけてくれる。
「うん、お兄さんが帰ってくるの待ってるね」
嬉しいな、なんて思いながら答える。
天井から脱出したお兄さんたちが、今度は一斉に窓ガラスに突き刺さった。