第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
「なぁ、君、なんで十四松に買われたの? お金ないの?」
別に買われたわけじゃないけど……。
「なんか流れで……」
「家は? 親、心配してないの?」
「今日はいないから……」
「ふーん……」
お兄さんはじっと見つめてくる。まるで心の中を見透かされているみたいだ。居心地悪い。
「ちょっとおそ松兄さん、やめなよ。尋問みたいだよ?」
ピンクのお兄さんが止めてくれた。
「ああ、わりぃ。んじゃ、家に帰っても夜は誰もいないの?」
「だから! おそ松兄さん!」
私は頷いた。別に隠したいことでもないし。
「うん。今日はたぶん帰ってこないと思う」
「へぇ、そうなんだ……」
それ以上、返事のしようがなかったのか、赤いお兄さんは黙り込んだ。
他のお兄さんたちも困ったように手を止めて、私を見ている。見知らぬ女子高生の家庭事情にどこまで踏み込んでいいものなのか、迷っているのだろう。
この空気、耐えられないや。何か言わなきゃ。
口を開こうとした時、黄色のお兄さんが笑顔で私を覗き込んだ。
「ねーねー! 愛菜ちゃん、今日泊まってく?」
「「「「「はっ!?」」」」」
お兄さんたちが一斉に声を上げた。
「えっ……?」
私も思わず声を出してしまう。
泊まる? この家に?
「うちに泊まればみんないるから淋しくないよ!」
「でも……」
「みんなで枕投げしたりして楽しいよ!?」
「つまり、お兄さんたちと一緒の部屋で寝るってことですか?」
「「「「「っ!?」」」」」
なぜかビクッと反応するお兄さんたち。