第27章 ぼくは紫陽花(あじさい)【十四松】
《愛菜side》
きっかけは、友達が教えてくれたレンタル彼女のアプリだった。登録してプロフを書き込んでおけば、直接会いたい人からメッセが来る。
一緒にデートして、3〜4万円。
素人同士が自分たちで約束を取り付けて、レンタルしたりされたりするシステム。
レンタル彼女を派遣する会社に比べてコストがかからないから、借りる側からするとお手頃価格。私たちにしてみれば、面倒な手続き一切なしで今日ちょっとお小遣い欲しいなと思ったらすぐにできる。
JKであることを売りにできるし、オプションだって自分で設定できる。もちろん、私が募集しているのは食事とか買い物とか健全なお付き合いをしてくれるパパだけ。
ただ、気楽にできる分、どんな相手が来るか分からないからリスクはある。それに親や学校にバレたら大変なことになる。
レンタル彼女をやってみようと思ったのは、軽い暇潰しだった。お金が欲しいというのは表向きの理由。学校が終わって家に帰ってもいつも一人だし、自分で夕飯を作らなくてはいけない。
だったら、誰かとおしゃべりしながら夕食を食べれば淋しくないし、おまけにお金まで貰えるなんて一石二鳥じゃん? そんな軽いノリ。
――とにかく誰かと楽しく過ごしたかった。
でも、この試みは結局1回も成功していない。なぜなら、レンタル彼女初日でいきなり黄色のパーカーを着た頭のおかしい人に邪魔されたからだ。
がっかりしたけど、同時にホッとした。やっぱり知らない人に会うのは怖い。それでも真っ直ぐ誰もいない家に帰るのは嫌だった。
以来、何度約束を取り付けても、この黄色いお兄さんに邪魔をされて、うまくいった試しがない。
場所を変えればいい、というのは、ごもっともな意見。
分かってはいるけど、私はこの公園を利用し続けている。
いつの間にか止めてもらうこと前提で約束を取り付けるようになっていた。