第5章 それでも君が好き【チョロ松】
目が覚めると、午後11時になっていた。
ああ、あのまま寝ちゃったのか。喉乾いたな。
水を飲もうとキッチンに行くと、水道の音。愛菜が洗い物をしている。
あ、そうか。洗い物やってくれてるんだ……。愛菜、仕事で疲れてるのに……。
水道を止め、愛菜が振り向いた。
「あれ? チョロちゃんどうしたの? 寝てるのかと思ってた」
「あ、ああ……。えっと、寝てたんだけど、起きちゃって……水でも飲もうかと」
「そっか〜。冷蔵庫に今日買ってきたお水入ってるよ」
「うん……」
なんだ? 喧嘩したはずなのに普通に接してくるぞ?
僕は、冷蔵庫から水を出すと振り返った。
「あのさ、さっきのことどう思うの?」
「さっきのこと?」
愛菜が不思議そうに返す。
「だから! カレシが出て行くって言ってるんだよ? 止めないの?」
「う〜ん……」
「僕が出て行ってもいいの?」
愛菜は、ゆっくりと言葉を選ぶように喋り始めた。
「出て行って欲しくはないけど、それを決めるのはチョロちゃんだから……ここにいたくないって言うなら無理に引き止められないし」