第24章 悪魔は甘いキスがきらい【おそ松、トド松】
「トッティと付き合いたいんだろ?」
「そうだよ? でも、エッチしたいわけじゃない!」
「付き合ったらするだろ?」
「それは付き合ってもっと仲がよくなったらでしょ!? 最初からなんて気持ちがついていかないよ!」
デビおそは不思議そうに首を傾げる。私の言っている意味が本当に分からないようだ。
「別に先にしようが後にしようが一緒じゃねぇか」
「全然違うよ! もういい! 余計なことしないで! トッティに嫌われたくない! こんなことなら、普通のバイト仲間でいたほうがマシ!」
涙が出てくる。なんで分かってくれないの?
「おい、愛菜、何も泣くことないだろ?」
「うるさいっ! デビおそなんて嫌い! バカ! もう何もしないで!」
涙でクッションが濡れていく。
「何もしないわけにはいかないだろ? 契約しちゃったんだし」
デビおそは困ったように頬を掻く。
「じゃあ、さっさと魂を持って行けばいいでしょ!? もうどうでもいい!」
叫んだ瞬間、部屋の照明が消えた。生温かい風がどこからか吹いてきて私の頬を撫でる。顔を上げると、デビおそが宙に浮き、私を見下ろしていた。
「その言葉、本当だな……?」
いつものおちゃらけたデビおそとは全く違う声。低く、唸るように囁く。
「え……?」
デビおその表情は凍るように冷たく、瞳には感情が見えない。初めて会ったときと同じようにおどろおどろしい黒紫色の渦がデビおその周りを包んだ。
「魂を持っていっていいんだな……?」
一切の感情を排除したような冷たい声が突き刺さる。
「デ……デビおそ……?」
私は本能的に危険を感じ、後ずさった。