第24章 悪魔は甘いキスがきらい【おそ松、トド松】
***
その日の夜、自室のベッドの上に座りながら、私はクッションを抱き締めた。
「甘いチョコレート」
ぼそっと呟く。
「ぐはっ!」
床に座っていたデビおそが体を折り曲げた。
「甘いケーキ」
「ぐうぅぅうっ!」
苦しそうに胸を掻きむしる。
「甘いパンケーキに甘いバウムクーヘンに甘いマカロン。和風も言っておく? 甘すぎるくらいのお汁粉」
「ぐおぉおおお!」
デビおそが頭を押さえて、ゴロゴロと転げ回る。
キスでも食べ物でも、とにかく『甘い』という言葉がついていれば嫌がるようだ。これならエクソシストがいなくても悪魔祓いできちゃうかも?
私はベッドの横の本棚から漫画を取り出した。
「この漫画、もう1回読もうかな〜。上司との恋愛物でめちゃくちゃ甘いやつ。会議室で上司に押し倒されていきなり甘いキス! からの、給湯室で隠れて甘いイチャつき! からの、ひょんなハプニングでホテルに入ってしまい、甘いひととき!」
「ぐっ……お、おい、愛菜……! それ以上は言うな……」
デビおそが震えながら私に向かって手を伸ばす。
「もうとにかく最初から最後まですごいの! どのシーンも甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘いあまーい!」
「あーー!! 分かった! 分かったから! 悪かったよ! 俺が悪かった!」
デビおそがベッドの前で正座をする。矢印型のしっぽはショボンと垂れ下がり、せわしなく動いていたはずの黒い羽根も元気がない。
「ふーん、悪かったって、何が?」
私はデビおそを睨みつけた。
「トッティのことで怒ってるんだろ!? 悪かったよ、本当に!」
その通りだ。私は怒っている。