第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
追いついて見てみると、愛菜は柵の上を指差していた。僕の学校は、敷地を囲う柵にさらに防犯用の網が上の方までかけられている。でも、彼女が指差した場所は、網が破れ大きな穴が空いていた。
「ここから入れって言うの? バレたら怒られると思うよ? 網がかけられているのは入れないようにしてあるからで、簡単に入ってしまったら意味がないだろ? もしかしたら、先生が中にいるかもしれないし、防犯ベルが鳴れば警備会社に連絡がいくだろうし、見つかった時の言い訳が『桜を見に来ました』なんて、まず信じてもらえないだろうし、だいたい愛菜は、女の子なんだから、こんなことしちゃだめだろ」
言いながら愛菜を見ると、すでに彼女は穴の縁に足をかけていた。
「もう〜! チョロ松くん、グチグチ長いよ。全部聞いてたら、おばあさんになっちゃう! いいから、後に付いてきて」
「…………」
僕たちは穴から敷地に入ると、奥にある特別教室の校舎を目指した。いつもは賑やかな学校も今日はひっそりとしていて、まるで知らない場所に来たみたいだ。
「ほら! チョロ松くん! 行こ!」
桜の木が遠くに見え、愛菜は走り出した。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
慌てて追いかける。
目の前を走る愛菜の白いワンピースが楽しそうに風に揺れる。