第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
【終わりとはじまりの日曜日】
「チョロ松くーん! チョロチョロリンリーン!」
大きな声。
僕は顔をしかめて、走ってきた愛菜を見た。
「愛菜、その呼び方やめてよ。恥ずかしいだろ?」
「うん、私服のチョロ松くんも可愛いね!」
やっぱり人の話を全然聞いていない。僕たちは学校の近くで待ち合わせていた。
金曜日に愛菜の部屋で抱き合ってから、二日ぶり。日曜日だから、ふたりとも私服だ。愛菜は、白いワンピースを着ていた。よく似合っている。
「学校の桜を確認しないと納得しないって、どんだけ負けず嫌いなんだよ。桜は散ってるって言っただろ?」
僕はため息をつきながら、歩き出した。
「そんなの見てみないと分からないじゃん!」
今日もよく晴れていて気持ちがいい。学校なんか行かずにどこかでデートしたほうがいいと思うんだけど。
僕たちは学校の正門に着いた。当然、閉まっている。
「ほら、鍵が閉まってて入れないよ。諦めてどこかに遊びに行こう」
僕の言葉に愛菜がフフンと笑う。
「これだからチョロ松くんは三流なんだよ。ここはプロに任せたまえっ!」
愛菜は正門を離れ、学校の裏門に向かって走り出した。
いや、何のプロなんだよ。
僕はやれやれと愛菜の後を歩きで追う。
「チョロ松くーん、早く! ここ! ここ!」
愛菜が手を振っている。