第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
すぐ近くで愛菜の息遣い。今にも重なりそうな位置にある唇。彼女が口を開いた。
「チョロ松くんはキスしたいの……?」
僕は鼻をすりすりと擦り付ける。
「したい……」
愛菜の甘い香りがする。汗くさいなんて言ってたけど、むしろいいニオイだ。彼女の色香にフラフラ酔ってしまいそうだ。
「でも……」
愛菜が言葉を濁す。
「だめ……? 愛菜はしたくないの……?」
愛菜が唾を飲み込むのが分かった。僕ってば、間抜けことを聞いてるな。愛菜がしたいわけないだろ?
「チョロ松くん……」
「うん?」
愛菜が鼻を擦り返してきた。
「私もしたい……」
頭に血が上る。衝動が込み上げる。次の瞬間には僕たちの唇はもう重なっていた。柔らかい愛菜の唇。甘すぎて身体ごと溶けちゃいそうだ。
初めてのはずなのに、もうずっと前からそうすることが決まっていたみたいに、愛菜とのキスは自然なことに思えた。
しばらくして顔を離すと、愛菜が恥ずかしそうに俯く。胸が締め付けられる。全然足りない。
「も、もう1回……だめ?」
僕は愛菜の肩を掴んだ。
「いいけど……」
愛菜が顔を上げる。
また唇を重ねる。目を瞑った愛菜の緊張が伝わってくる。心臓が音を立てているけど、僕の音なのか愛菜のものなのか分からない。
僕は顔を離すと、彼女をぐっと引き寄せた。
「もっ……もう1回!」
愛菜がふっと笑う。
「もう1回が多いよ」
「だ、だめ……?」
1回だけって言ったのは僕だけど、こんなのやめられないよ。もっとしたい。