第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
愛菜が怯えた顔で掛け布団を抱き締める。ベッドに乗った僕は、彼女に向かってそろそろと近づいた。
「ちょっと……チョロ松くん! 寄らないで! 私、熱あったから汗くさいし、パジャマだし!」
「僕は気にしないよ……」
さらに近づく。
「えっと……このパジャマ、すっごくダサいの! もう、空前絶後のダサさ! だから、来ないで!」
「そんなことないと思うけど……」
「じゃあ、もうヨーグルトあげないよ!? いいの!?」
「別にいらない……」
僕は愛菜の目の前に来た。
「チョロ松くん……」
愛菜が頬を染めて、僕を見る。
ラストチョイスだ。
友情をぶっ壊すのか、守るのか。僕はここで選ぶ。
どうなるかなんて分からない。どっちを選んでも正解かもしれないし、だめかもしれない。どうするんだよ、チョロ松。
「桜……」
僕は呟いた。
「桜?」
愛菜が不思議そうに聞き返す。
「約束しただろ? 桜が散ったら言うこと聞くって……」
僕は彼女の布団に手をかけた。
「えっ……桜、散っちゃったの……?」
愛菜がハッとする。
「ここにくる途中の桜並木、全部葉桜になってた」
「っ……そうなんだ……」
やっぱり淋しそうな顔。言わなきゃよかったか? でも……。
僕は彼女に顔を近づけた。
「愛菜……1回だけ……キ、キスとか……だめ……かな……?」
「っ!」
目を見開く愛菜を引き寄せ、さらに顔を近づける。彼女の鼻に僕の鼻をこつんとぶつけてみた。