第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
二人分のジュースとスナックを乗せたお盆を渡され、僕はお礼を言って階段を上がる。玄関の扉が閉まる音を聞きながら、愛菜の部屋の前に立った。
少し緊張する。いきなり僕が来たら、愛菜はどう思うんだろう? すぐに追い返されるだろうか。
「愛菜? チョロ松だけど」
恐る恐る声をかけてみる。
返事はなかった。
寝てるのか……? 僕はドアに耳を近づけてみる。
何も聞こえない。やっぱり寝ているのかもしれない。
「帰ったほうがいいか……」
耳を離そうとした時、「んっ……」と微かに声が聞こえた。
愛菜……?
今度はドアにぴったりと耳をくっつけてみる。かなり小さかったが、やはり声らしきものが聞こえてきた。
「……っ……ぁ……はぁ……っ……」
あれ? この声って……。
動悸が激しくなる。まさか愛菜の声じゃないよね? いや、でも……。嫌な予感。
「おい! 愛菜? いる? チョロ松だけど?」
声を張り上げてみる。
ドタッと何か重いものが落ちるような音。続いて、ガチャガチャと慌ただしく何かを動かす音。
足音が聞こえ、ドアが開いた。
「チョッ……チョロ松くん?」
息を切らしながら、顔を出した彼女はパジャマ姿で髪も寝癖がついていた。
「うん……どうしたの? 大丈夫? 寝てた?」
「あー……うん! 大丈夫!」
僕は部屋に入った。すぐに隅から隅まで見回す。いつも通りの愛菜の部屋だった。
「愛菜……今、誰かいた?」
「へ? 誰か?」
愛菜が髪を整えながら、ベッドに座る。
「男が来てたわけじゃないよね……?」
「男?」
不思議そうに首を傾げる愛菜。