第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
***
学校が終わり、僕の足は自然と愛菜の家に向かっていた。行ったところで、会ってくれるかは分からない。
でも、一旦謝ろうと思ったら、いても立ってもいられなくなった。どうしても今日言わなきゃという気になった。
坂を登り、桜並木の道で足が止まる。見上げると、花はもう散り、葉桜になっていた。昨日までの雨のせいで、地面には土で汚れた花びらが無数に落ちている。
「そりゃ、散るよな……」
愛菜の残念がる顔が思い浮かぶ。散るって言ったのは僕だけど、できれば残っていてほしかった。
桜並木を抜け、細い路地を曲がると、愛菜の家がある。まるで絵本にでも出てくるような花に囲まれた家。手入れの行き届いた庭を見ながら、僕はインターホンを押した。彼女の母親がすぐに出てきてくれた。
「あらっ、チョロ松くん! 久しぶりねー! お見舞いに来てくれたの? 上がっていって! 愛菜なら、もう熱は下がっているから」
「はい、お邪魔します。お庭、きれいですね」
母親は嬉しそうに顔を綻ばせる。
「そうなのよー! きれいでしょ? 最近はちゃんとガーデニング教室にも通ってるのよ!」
よかった……。さすがにDVDの一件は、母親には伝わっていないようだ。僕はホッとしながら靴を揃えて、上がらせてもらった。
愛菜の家に来るのは今日が初めてじゃない。彼女の部屋がある2階へ上がろうとすると、後ろから母親に声をかけられた。
「チョロ松くん、これ、部屋に持っていって。二人で食べてね。悪いけど、私はこれからパートなのよ。飲み物が足りなかったら、適当に何か出して飲んでいいからね!」