第23章 桜とぼくらの一週間【チョロ松/学生松】
「ん? なに?」
愛菜が僕をジトッと睨む。
は? なに? なんで急に怒ってるんだよ。何か入ってた?
「なんかショック。チョロ松くんって、こういうの好きなんだね……」
さっきまでのテンションが嘘のように愛菜が静かに言葉を吐く。
「んんん? 好きって何が?」
愛菜は、ゆっくりと鞄に手を入れ、何か四角い薄い箱を取り出した。
なんだ? 何か入れてたっけ?
じっと目を凝らす。覚えのないDVDのケース。僕はタイトルを見て、息を呑んだ。
『クラスのあの子は巨乳女子高生♥休み時間におっぱいモミモミぬるっと挿入!』
は……?
「最低! チョロ松くんってこういうの持ち歩いてるんだ! しかも女子高生って何!? クラスの子をそういう目で見てるの!?」
愛菜がDVDでバシバシと叩いてくる。
「うわ! 痛っ! ちょ! 待って! 違うって! 知らないから!」
昼休みを思い思いに過ごしていた生徒たちが一斉に僕らを見る。愛菜が持つDVDに気づいて、あちこちから失笑が漏れた。見回すと、離れた席で唯一、腹を抱えて大笑いしているヤツがいる。おそ松兄さんだ。
なるほど、犯人はクソ長男か……。僕は全てを理解した。
「愛菜、違うって。これは兄さんが……」
「ほんっともう知らない! あとで捨ててくるから!」
愛菜がDVDを自分の机の中にしまう。
「ねぇ、愛菜、ごめんって。本当に僕じゃなくて……」
「話しかけないで!」
愛菜は頬を膨らませ、こっちを見ようともしない。
ああ、もう、おそ松兄さんめ、何してくれてんだよ。だいたい、何で僕が愛菜に謝ってるの? 僕が悪いわけじゃないし、仮に僕のだとしても愛菜には関係ないよね?
「授業始めるぞー」
世界史の教師が教室に入ってくる。一斉にみんなが席につき、そのまま小テストが始まった。
愛菜をこっそりと見るが、まだ不機嫌そうに顔をしかめている。
「はあ、最悪だ……」
僕はテスト用紙に突っ伏した。