第22章 大統領には押させない!【トド松】
「奥田さん、ボクも行きます」
トド松補佐官が後ろからついてくる。
「でも……」
「二人で確認したほうが安心でしょ? もう夜だし、早く終わらせちゃいましょう」
確かに一緒に行ってくれるなら心強い。
私たちは執務室にとんぼ返りすると、真っ先に机に向かった。引き出しの鍵を閉め、さらに頑丈な大型の南京錠を6個付ける。念には念を入れ、そのうち3個はダイヤル式、残りは鍵で開けるタイプ、と錠前の種類も変えた。
「これだけ鍵をかければ、大丈夫ですよね?」
隣のトド松補佐官を見る。
「うん。さすがに開けられないでしょ。帰るときにドアにも南京錠をつけたほうがいい」
「分かりました。じゃあ、帰りましょうか」
私は部屋の電気を消した。二人揃って執務室を出ようとする。
瞬間――。
雷のような大きな音が轟き、真っ暗な部屋に明るい光が差し込んだ。
「え? 花火?」
私たちは振り返る。
次から次へと打ち上がる色とりどりの花火。執務室の窓に切り取られた狭い夜空が、大輪の花で埋め尽くされていく。
「あ……! そっか! 新大統領就任のお祝いの花火か!」
トド松補佐官が思い出したように手を叩いた。
確かに今、世間は祝賀ムード一色だ。全く期待されていなかったパンツ一枚のおじさんが、いきなり大統領の座に躍り出たのだから、こんなにスカッとする話はない。国民の期待も高まる一方だ。
私たちは帰るのをやめ、ぼうっと窓の外の花火を眺めた。
今日一日、私もトド松補佐官も大統領にボタンを押させまいと、ただそれだけに必死になっていた。こんな人が大統領なんて冗談じゃない! とさえ思った。でも、世の中にはデカパン新大統領の誕生を喜び、彼を応援している人たちがいる。
私が補佐官としてやらなくてはいけないこと。それは大統領を支え、国民の生活を守ること……。