第22章 大統領には押させない!【トド松】
「いやダス!」
「じゃあ、なんであんた大統領になったんだよっ!」
トド松補佐官がヒステリックに叫ぶ。
「トド松さん、落ち着いて下さい。大統領、とりあえずはどんな仕事があるのか把握しましょう。まずは、前大統領からの引き継ぎの説明を致します」
私はトド松補佐官を制した。我々補佐官が感情的になっては収拾がつかなくなる。常に冷静沈着、これが私たちのモットーだ。
トド松補佐官は、ハァッと息を吐きながら、乱れたスーツの襟元を整える。
「ありがとう、奥田さん。君が冷静で助かるよ……」
「いえ、これが私の仕事ですから」
にっこりと微笑んでみせると、トド松補佐官はようやくホッとしたような表情になった。かわいそうに、彼も気苦労が絶えない。
「じゃあ、ボクはとりあえず他の仕事を片付けてきますから、奥田さんは大統領をお願いします。またすぐに来ますから……って、おぉいっ!!」
振り返ったトド松補佐官が慌てて大統領のパンツを引っ張る。私たちが目を離した隙に、デカパン大統領はもうあのボタンを押そうとしていた。
「チッ、バレたダスか!」
大統領が悔しそうに舌打ちをする。
「何考えてんだ、このハゲ! ボタンは押しちゃだめって言ってるだろ!?」
トド松補佐官の言葉に、デカパン大統領は頬を膨らませた。
「えーそれは無理ダス!」
「いや、無理とかじゃなくて、押しちゃダメなの!」
トド松補佐官とデカパン大統領がまた取っ組み合いを始めた瞬間、執務室のドアがノックされた。
返事をすると、補佐官の一人が顔を出す。
「大統領、定例のラジオ演説のお時間です」
「え〜、面倒くさいダス!」
「面倒でもやって頂きます! いいから、行きますよ!」
補佐官はデカパン大統領を引きずり、部屋を出ていく。
ドアが閉まると、途端に部屋は静けさに包まれた。