第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「じゃあ、これからもここにいていいんですね」
結婚してからずっと引っかかっていた胸のつかえがようやく取れた気がする。私の家はここなんだ。
「当たり前でしょ……ふたりと2匹で暮らす家……まあ、もうひとりいてもいいけど……」
「え?」
一松さんが猫たちをベッドの下に降ろし、ニヤリと笑った。
「どうする……? もうひとり、いらない?」
「それって……」
返事をする前に組み伏せられる。身体は再びベッドに沈み、一松さんの顔が目の前に迫った。
「ヒヒッ……もう遠慮しなくていいし、責めるのも責められるのもオーケーなんでしょ? 明日は休みだし、たっぷり楽しめそう……」
キスしようとしてきた一松さんの顔を慌てて押し戻す。
「たっぷり楽しめるって、明日はデートに行く約束ですよ!?」
「忘れてないよ……。でも、デートは夕方からでもいいでしょ……?」
「ええ〜!? でも、いちご狩り……」
一松さんは大袈裟に溜息をついた。
「あんた、ほんとにそんなの行きたいの? 散々、農家の人に育ててもらっておいて、最後の収穫だけ持っていっていちご食うなんて、虫が良すぎるでしょ……。そんなことしてたら、あんたまで幸せ借金が増えるよ……?」
「幸せ借金?」
意味が分からなくて聞き返す。
「まあ、おれは現在進行形でどんどん幸せ借金が増えてるんですけどね……。毎日仕事帰りに実家に寄って、十四松に殴ってもらって戒めてるから、何とか返済できてるけど……」
「ええっ!? 殴ってもらってる!? どうゆうこと!?」
返事はなく、突然、唇を塞がれる。私たちはそのまま何度も何度もキスを繰り返した。