第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「ふふっ、嬉しい……痛っ!」
突然の痛みに私は飛び起きた。
足元であずきがニャーと鳴く。ベッドに飛び乗り、私の足を噛んだようだ。
一松さんも慌てて起き上がる。
「こら、あずき、だめだろ! 今、おれたち取り込み中。後で構ってやるから……」
その言葉を聞いてか、きなこもベッドの上に乗り、枕元で鳴き始めた。
「私、やっぱり2匹に嫌われてるんでしょうか……」
不満そうなあずきときなこに不安になる。ご主人様を独り占めされて怒っているに違いない。
「逆だよ……。愛菜なら、噛んでも許してもらえるって分かってるから甘えてんだよ。子猫が母猫によくやる行動。本当に嫌なら寄っても来ないから……」
一松さんはきなこの顎の下を撫でる。ゴロゴロと気持ちよさそうな音が聞こえた。
「そうなんですか?」
「うん……もっと愛菜に構ってほしいんだよ。夜だって愛菜のそばで寝てるでしょ……?」
「えっ!?」
「いつも2匹とも愛菜の枕元で寝てる……たまに愛菜の上に乗ってる時もあるし。明け方には起きて移動するから、愛菜は気付いてないかもしれないけど……」
私は猫たちを見た。いつの間にかあずきときなこはベッドの上で毛づくろいを始めていた。
知らなかった。この子たち、一緒に寝てくれていたんだ……。
「私、一松さんにも猫たちにもあんまり歓迎されていないのかなって、実は思っていたんです……」
一松さんが笑う。
「そんなこと気にしてたの……? おれは愛菜が好きだし、こいつらもそうだと思うよ……。むしろ、前にいた場所より居心地いいんじゃない? 前は実家で兄さんや弟たちもいて落ち着かなかったし、中にはこいつらのニボシ食っちゃうヤツもいたし……」