第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「私ももっとしたいかも……」
答えると、一松さんがごくりと喉を鳴らした。優しく手を引かれ、寝室に向かう。後ろから猫たちも付いてくる。
「ねぇ、愛菜……なんでおれに敬語使うの……?」
寝室のドアを開けながら、一松さんがぽつりと尋ねた。
「旦那様だから、敬語がいいかなと思って。やめた方がいいですか?」
「別に……。やめなくていい……」
一松さんは部屋に入り、フロアライトを付ける。薄暗い部屋の中で大きなダブルベッドが浮かび上がった。毎日寝ている見慣れた寝室のはずが、今日はまるで初めて来た部屋みたいに見える。
胸が高鳴るのを抑えながら、私は一松さんの隣に立った。今からここで一松さんとまた愛し合うんだ……。嬉しさが込み上げる。
彼は無言で私を優しく引き寄せ、ベッドに押し倒した。柔らかいマットに沈み込みながら、のしかかってきた彼に抱きつく。
「愛菜……」
「なあに、一松さん?」
「とりあえず、イチャイチャしたい……」
「うん、私も……」
抱き締めながら、頬ずりをして笑い合う。
「ねぇ、おれとなんで結婚したの……?」
一松さんが私を覗き込んだ。
「だって、好きだから。一松さんは?」
「おれも……。ニートやめてでも、愛菜と絶対結婚したいって思ったから、逃げられる前にプロポーズした……」
愛おしそうに頭を撫で、彼が唇を重ねてくる。チュッチュッと互いの唇をついばんでは、微笑み合う。
「一松さんもちゃんと『好き』って言葉で言って?」
「はぁ? そんなのおれが言うと思うの?」
「思わない」
私たちはまたくすくすと笑い合う。
一松さんは私の耳元で囁いた。
「愛菜……好き……」