第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「どうして謝るんですか?」
一松さんの肩に頭を乗せる。激しい情事の後の気怠い時間。仲良く過ごせるなら、こんな時間もいい。
「さすがにメス豚は言い過ぎた……」
「あ〜、確かにそれはそうですね……」
私がくすくす笑うと、一松さんも苦笑いをした。
「でも、おれのことはオス豚って言ってくれていいから……」
「は?」
「おれだったら、もっと激しく罵ってくれても全然構わない……むしろ、ご褒美……」
私は一松さんを見上げた。フザケて言っているのかと思ったが、真面目な顔をしてこちらを見ている。
「えっと……一松さんは罵られる側の趣味もあるってことですか……?」
言葉を選びながら回りくどく聞いてみる。まだ、直接聞けるほどの勇気はない。
一松さんはニヤッと笑った。
「そうなんだよね……虐めるのも虐められるのもどっちも好き……」
なんだか不思議。初めて知ることばかりだ。3ヶ月一緒に暮らしてきて、今まで一松さんのことを全然知らなかったんだなと気付かされる。それだけお互い夫婦生活については触れないようにしてきたということだろう。
私は一松さんの頬にそっと自分の鼻を擦りつけた。
「じゃあ、これからはどっちもできるように頑張りますね?」
一松さんが目を丸くする。
「あんたって……」
「あれ? 私また何か変なこと言いました?」
思っていなかった反応が返ってきたので、不安になる。
一松さんは赤い顔をして私を眺めた後、そっと手を取った。
「いや……あんたって、ホント最高の嫁……。ねぇ、ベッドに行こう……? おれ、もっと愛菜としたい……」
その言葉に鼓動が跳ね上がる。一松さんにこんなこと言われるなんて。今まで言われたことがなかったから新鮮に感じる。