第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「ちょっと待って……話が飛びすぎてワケ分かんないんだけど……なんで離婚することになってんの……」
一松さんが困ったように頭を掻いた。
「違うんですか……?」
涙で前がよく見えない。私は目を擦る。
「それ言うなら、むしろ、あんたがおれに不満なんだろ……? クズでゴミでニートなおれと結婚することになって、人生捨てたようなもんだって、内心思ってくるくせに……いつ離婚を切り出されるのかと思ってたけど……」
一松さんの意外な言葉。考えたこともなかった。私が一松さんに不満? そんなこと思うはずがない。
「全然不満なんてないです。それに今はニートじゃないですし」
私が返すと、一松さんは首を振った。
「いや、まだ働き始めて3ヶ月だから、そのうち挫折するかもしれない……」
そんなこと気にしないのに。だって、『ニートをやめて働くから結婚しよう』と言われて、本当に嬉しかったんだもん。挫折してやめたって構わない。また、一松さんが本気になるまで私が働けばいい。
「あ! でも、一松さん、いつも私の家事をチェックしてますよね? 何か言いたいことがあるのかと思ってました……」
気になっていたことを言うと、一松さんは不思議そうに首を傾げた。
「チェック? 何のこと……?」
「だって、いつも洗い物したり料理してると後ろに立ってるし……」
「あ〜……それは違う……尻を触ろうとしてただけ……」
「は?」
尻? 尻を触る? どういうこと?
一松さんはバツが悪そうにぼそぼそと話す。
「新婚ってそういうことするイメージあるだろ? 後ろから抱きついて尻触ったり胸触ったり。おれもしようかと思って……」
私は呆然と彼を見つめた。一松さんって、そういうこと嫌いなんじゃなかったの……?