第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
「これ……」
一松さんが食事を終えて、食器を持ってくる。
「あ! 別にそのままでいいんですよ!? 私が片付けるので」
「うん……」
一松さんは食器を置くと、私の後ろに立った。そこから動かない。
「一松さん?」
気になって振り返ると、一松さんは「なに?」と返す。
「何か用でしたか?」
「別に……洗い物続けて……」
「え、でも……」
「立ってたらだめなの……?」
「いいですけど……」
私は洗い物を再開する。一松さんは動かない。
一松さん、もしかして、私の家事をチェックしてる? 何か不満なんだろうか? 思い返してみれば、よくキッチンで私の後ろに立っていたりウロウロしていたりする。いつも不機嫌そうだし……。
私は水を止め、食器とスポンジを置いた。やっぱりいつまでも一人で悩んでいるわけにはいかない。夫婦なんだし、話し合わないと。
「あの!」
思い切って振り返る。
一松さんがぎょっとして後退った。
「なに……?」
「何かあるなら遠慮せず言ってください! 私、できるだけ直しますから!」
「は?」
一松さんが驚いたように口を開ける。
「言いたいことがあるんでしょう? 私もまだ新米主婦で至らないことが多いと思いますけど、頑張りますから!」
「…………」
一松さんは答えない。何を考えているのか表情からもよく分からない。
「な、なんで黙ってるんですか? もしかして、離婚したいとか……? 確かに私といても全然楽しくないかもしれないけど、いくらなんでもこんなに早く別れるなんて言わなくても! まだお互いのこと、そんなに知らないし! もっと長い目で見て欲しいと言うか……。わ……別れたくないです……」
喋っているうちに興奮して涙が出てくる。私ってそんなにだめなんだろうか。返事できないほどに? 離婚なんてしたくない……。