第21章 恋をすればお砂糖なんて【一松】
私は一松さんの向かいに座る。彼は顔も上げない。食べることに集中しているようだ。
「あの、一松さん」
私は恐る恐る話しかけた。
一松さんが手を止める。
「なに……?」
「明日休みですよね?」
「そうだけど……」
私は一松さんに笑いかけた。
「どこかに出掛けませんか?」
「なんで……?」
なんで? そう聞き返されると困るけど……。
「どこかに遊びに行きたいな〜と思って……」
「…………」
「ほら、私たちって出会ってすぐ結婚したから、お付き合いした期間が短いじゃないですか! だから、その、デートしたいな〜って」
「…………」
「も、もちろん、一松さんが慣れないお仕事で疲れているのは分かってます! 分かっているんですけど、そろそろ暖かくなってきたし、たまには」「いいよ……」
「え?」
私は一松さんを見た。
「別にいいよ……行くから……」
「本当ですか!? やった! どこに行こうかな? やっぱりこの時期はいちご狩り? あ、でも、映画も久しぶりにいいかも! どうしよう……」
私がわくわくと想いを巡らせていると、一松さんはまた黙って食事に戻る。
あれ? 一松さんはあまり嬉しそうじゃないな。もしかして、嫌々付き合ってくれてる……?
下を向いてご飯を口に運ぶ一松さんを見ていると、彼は急に顔を上げた。
「ねぇ、そんなにじっと見られたら食べ辛いんだけど……」
「あ、ごめんなさい! 片付けしてますね!」
立ち上がって、キッチンシンクに向かう。
いけないいけない。一松さんはせっかくニートを卒業して働いてくれているんだから、家では居心地よく過ごしてもらわないと。
私は洗い物を始めた。