第20章 アクアリウムに沈む愛【カラ松、おそ松】
オレは愛菜の手を掴むと、もと来た道を戻り始めた。確かここまで来る途中にラブホテルがあったはずだ。
「カラ松くん!? どこ行くの!?」
愛菜が怯えた声を出す。
「決まってるだろう? ラブホだ」
オレは愛菜の手を引っ張りながら、強引に歩く。
「急にどうしたの? なんか怖いよ……」
ああ、そうだな。怖いだろうな。オレもだ、ハニー。オレも怖いんだよ。今頃になって、お前に捨てられるのが。
こんなことなら、遠慮せずに早く抱いておけばよかった。愛菜がその気になるまでと思って、我慢して待っていた結果がこれだ。あっという間におそ松に奪われてしまった。
目的のホテルが見えてくる。オレは迷わず突き進む。愛菜は抵抗することもなく、引っ張られるがままについて来る。
ラブホの入り口の前で、愛菜が一瞬、躊躇した。オレは立ち止まった。
「愛菜、やっぱりオレとでは嫌か……?」
振り返ると、愛菜が泣き出しそうな顔でオレを見た。
「もしかして、カラ松くん……」
そこまで言って彼女は黙り込む。その後の言葉が続かないようだ。それでいい。言うんじゃない。オレも言う気はない。口に出してしまえばオレたちは終わりだ。
「愛菜……お前を抱きたいんだ……抱かせてくれ……」
手を引くと、愛菜はそれ以上抵抗しなかった。ラブホの中に入り、部屋を適当に選ぶ。パネルのライトが消えた瞬間、愛菜が唾を飲み込む音が聞こえた。
502。5階だ。エレベーターに乗り込むと、オレたちは黙って階数の表示を見上げる。