第20章 アクアリウムに沈む愛【カラ松、おそ松】
「ねぇ、カラ松くんは、全部見終わったの? これからどうする?」
愛菜が尋ねてくる。
オレはちらりとおそ松に目をやった。さっきと変わらない体勢で、水槽にもたれかかっている。
「そうだな……。そろそろ帰らないか?」
オレの提案に愛菜は素直に頷いた。
「うん、そうだね……」
「おい、おそ松も帰るぞ」
おそ松の方を向いて声をかけると、ヤツは目を開けて、水槽から離れた。
「あー……俺はまだいいや」
「どうした? 帰らないのか?」
「いや、帰るけど……もう少し見ていくからさ、お前らは先に帰れよ」
力なく微笑むおそ松。
「そうか……。愛菜、行くか?」
「うん」
愛菜は、オレの手を取り、歩き出した。
水族館を出ると、外が暑かったことを思い出す。まだ、日の光がさんさんと降り注ぐ道をオレたちは歩き始めた。
「愛菜、時間は早いが、もう帰るなら家まで送るがどうする?」
「うん、今日はなんか疲れたし、帰ろうかな……」
虚ろな目で呟く愛菜。オレはその横顔に不安になる。
もしかして、無理矢理犯されたのか? 本人に聞くわけにはいかないが……。でも、あんなに気持ち良さそうに声を出していたしな。本当に嫌だったら、もっと抵抗していただろう。
オレたちはそれ以上会話することもなく、愛菜の家まで歩いた。
「ありがと。ここらへんでいいよ」
家に近づいたところで愛菜が立ち止まる。