第20章 アクアリウムに沈む愛【カラ松、おそ松】
誰もいない展示室へ戻り、椅子に座る。
最低だな、オレは……。
トイレでふたりの声を聞きながら、ショックを受けると同時にオレはものすごく興奮していた。愛菜がおそ松に責められる姿を想像して、今までにないくらいに股間は硬くなっていた。
溜息をつきながら、目の前の水槽を見ると、白いクラゲがのんびりと浮かんでいる。
――オレみたいだ。
アクアリウムの水の中を、あてもなく漂って、ただ、そこにいるだけ。愛菜への愛はあまりに重すぎて、オレの手を離れて水底へ沈んでいく。手を伸ばして掬い上げるには、あまりにも深すぎた。
目頭を押さえて下を向くと、展示室に駆けてくる足音。
「カラ松くん!」
愛菜に声をかけられる。
一体、どんな顔をすればいいんだ……。
「ああ、やっと合流できたな」
オレは努めて冷静に、立ち上がって微笑んだ。
愛菜もいつもと変わらない笑顔をオレに向ける。
「ごめんね、カラ松くん。一人で行っちゃって」
「フッ、いいさ、ハニー。見つかってよかった」
彼女がオレの腕にしがみついてくる。後ろからのろのろと展示室に入ってくるおそ松の姿が見えた。
「カラ松くん、見て! 赤いクラゲ!」
まるでさっきあったことなんか忘れてしまったかのように無邪気に水槽を指差す愛菜。
「おお、真っ赤だな」
笑いながら返す。
「カラ松くん、このクラゲきれいだね……」
「ああ、本当だな……」
オレが返事をすると同時に、入り口で立ち尽くしていたおそ松が水槽に額をつけて、目を瞑るのが見えた。
おそ松、何を考えているんだ? 後悔しているのか? それとも、してやったりとでも思っているのか?
赤いクラゲが優雅に腕を伸ばして形を変えていく。