第19章 アクアリウムに浮かぶ恋【おそ松、カラ松】
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「ねぇねぇ、カラ松くん! 見て! チンアナゴ!」
愛菜が水槽に駆け寄る。
「おおっ! 本当だ。顔を出して可愛いな」
後ろからカラ松が愛菜に寄り添う。
平日というだけあって、水族館は人が少ない。暗い館内でたまに親子連れや若いカップルを見かける程度だ。
俺ははしゃぐ二人を後方から眺めながら溜息をついた。
何が割引だよ。そもそも元の値段が高いから、割り引いたところで結構な値段じゃねーか。明日パチンコ行く分が吹っ飛んだぞ。
「カラ松くん、見て! ペンギンが泳いでる! 可愛い〜」
隣の水槽に移動し、愛菜はガラスの前で小さく手を振る。気付いたペンギンが餌と間違えたのか寄ってきた。
「愛菜! そのままこっちを向くんだ。写真を撮るぞ。フラッシュは焚けないから、うまく写るかは分からないが……」
カラ松がカメラを向ける。楽しそうな二人の姿はどこからどう見ても仲の良いカップルだ。
愛菜って、カラ松と特別仲良かったわけじゃないよな。なんでこうなったんだろうな。カラ松が酔って告白をした……さっき初めて聞いた。何でそんな大事なこと俺たちに報告しないんだよ。完全に抜け駆けじゃねぇか。
よほどペンギンに夢中なのか、写真を撮り終えた二人はくっついて水槽を覗き込んでいる。
あ……。
カラ松の手がそろそろと愛菜の背中に回され、肩を抱くのが目に入る。引き寄せられ、ますますカラ松にくっつく愛菜。
ああ、何だこれ。見てられない。
俺はそっとその場を離れ、隣の展示室のクラゲコーナーへと向かった。