第19章 アクアリウムに浮かぶ恋【おそ松、カラ松】
「どこに行く?」
後ろでカラ松の声。
「外は暑いから……この間、言っていた水族館は? あ、でも確か3人以上で割引が使えたはず。2人だと勿体ないね」
愛菜が答える。
「なるほど。おそ松も連れて行くか」
「はあっ!?」
俺は振り向いた。
「そうだね! おそ松くんを連れて行こう!」
愛菜がニコニコとカラ松に返す。
いや、お前ら何言ってんの? デートだろ!? めちゃくちゃ気まずいじゃねぇか!
「……というわけだ。おそ松、行くぞ」
カラ松が笑顔で俺を見る。
「んなもん、嫌だよ。お前らだけで行って来いよ」
「こらっ、おそ松くん、我儘言わないの。早く支度して」
今度は愛菜。容赦ねぇ。
「いやいや、俺の都合は? 気持ちは? お前らお兄ちゃんの意見を全く聞く気なしぃ!?」
「だって、家の中にいても漫画読んでるだけでしょ?」
「…………」
そりゃ、そうだけど。でも、別に水族館なんて興味ない。あれだろ? 魚が水槽の中で泳いでるんだろ? そんなのトト子ちゃんの家に行けば、いくらでも見られるし。釣りならともかく魚眺めて何が面白いの?
「おそ松。愛菜がせっかく一緒に行こうと言ってくれているんだ。お前は無下に断るつもりか?」
うるせぇな、カラ松。一緒に連れて行くって言い出したのはお前だろ。
「おそ松くんと一緒に行きたいなあ。お願いっ!」
愛菜が手を合わせる。
明らかに嘘だ。割引のためだって、つい数分前に堂々と言ってたじゃねぇか。まぁ、嘘でも一緒に行きたいって言われたら悪い気はしないけど。
「も〜仕方ねぇな〜。愛菜、今度パチンコ奢れよ?」
俺は重い腰を上げた。
「やだ」
「即答!? 何その冷たい感じ!?」
ツッコみながら、本棚に置いた財布を手に取る。
仕方ねぇな、愛菜の可愛さに免じて付いてってやるよ。
楽しげに部屋を出ていく二人の後をのろのろと追った。