第17章 片道タクシー【カラ松】
「今、『犯人が捕まるといいですね』っていいましたよね?」
「いいましたけど、それが何か……?」
おかしい。絶対におかしい。
「『事故に遭った』とは話しましたけど、『轢き逃げに遭った』なんて話していないのに。なんで犯人がいるってわかったんですか……?」
瞬間、急ブレーキがかけられ、車が止まった。
車内は静けさに包まれる。
運転手は大きなため息をついた。
「お客さん、その連絡は本当に病院から来たんですか?」
「え? だって、病院だと名乗って……」
「赤塚記念病院は今はもうやってませんよ? 廃墟になっているはずです」
「っ!?」
私は息を呑んだ。
どういうこと? じゃあ、なんで病院から連絡が?
運転手は静かに続けた。
「なんで轢き逃げかわかったか? そりゃ、わかりますよ。だって、その電話……
私 が 差 し あ げ た
んですから」
は?
何? 何を言ってるの?
自然と手足が震えてくる。
「え……彼は? 事故は? 嘘なの?」
運転手はシートベルトを外した。
「ええ、嘘です。正確には、『電話を差しあげた時点では』……ですが」
「は……?」
「でも、嘘はいけませんからね。ちゃんと真実になるようにしましたよ? ほら、さっき音がしたでしょう?」