第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
「帰らずに……覗いていたんですか……?」
私は顔を上げる。
「うん、覗いてた。ってか、カーテン閉めろよなあ。言っただろ? カーテン閉めて、警察呼べって。ったく、しょうがないおねーさんだな」
そういえば、男に覗かれたばかりだったのに、カーテンを閉めずにシャワーを浴びちゃったんだ。習慣とは恐ろしい。
「あの、松野さん……」
「おそ松でいいよ。弟が5人もいるからさ、松野って呼ばれると一緒くたにされてるみたいで何かイヤ」
「じゃあ、おそ松さん……」
おそ松さんがニヤニヤ笑う。
「いいね〜その呼び方。なに?」
「私のことを心配して覗いてくれたんですか……? それともただ……」
優しく笑いながら私の頬を撫でる。
「それともただ裸を見たくて覗いてたか? さぁな〜。どっちだろうな〜」
私は自分からおそ松さんの胸に顔を埋めた。
「おお!? お!? 愛菜ちゃん!? もぉ〜大胆っ!」
口ではおどけながらも、おそ松さんの腕は優しくそっと私を包んでくれる。そのギャップに胸が締め付けられる。
きっとおそ松さんは、全部分かってるんだ。だから、安心できるし、頼りたくなっちゃう。
私はおそ松さんの背中に手を回し、ぎゅっと強くしがみついた。おそ松さんのパーカーから柔軟剤と煙草の混じった香りがする。
この匂い好きだな……。
おそ松さんが溜息をつくのが聞こえた。私を抱き締めたまま、座り直し、後ろの壁にもたれかかる。
「本当に怖かったんだろ? ま、気が済むまでこうやってなよ。俺、付き合うからさ……」
パーカーの温もりを頬に感じながら、私はこくんと頷いた。