第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
逃げなきゃ……。
フラフラする頭で考える。体に力が入らない。床についた手が震えているのが分かる。
男が腰を掴み、自身のものを突き出した。恐怖で体が硬直する。
助けて
助けて
助けて
誰か、お願い
松野さん……
太い男のものが肉を押し分け、入ってくる。
「いやああっ!」
だめだ、ここで、犯される。
「おっさん、悪ふざけも大概にしろよ。今度は本当にぶっ殺すぞ?」
え?
瞬間、大きな音ともに男が床に叩きつけられた。
「女の子に乱暴するとか、クソだな! 警察に突き出してやっからな!」
松野さんの怒声。男の襟を掴んで引き上げ、勢い良く殴りつける。
鈍い音、飛び散る血。
私は悲鳴を上げた。
松野さんがハッとして、手を離す。
その一瞬の隙を突いて、男は松野さんを勢い良く突き飛ばした。殴られた顔を押さえながら部屋を飛び出していく。
「おい! 待てっ!」
松野さんが立ち上がるよりも早く、男は玄関を乱暴に開け、走り去って行った。
途端に部屋の中に静けさが戻る。
私はガクガクと震えながら、床にへばりついた。腰が抜けたんだろうか。動けない。
松野さんは立ち上がると、息を大きく吐いて、ゆっくりと私を見る。
どうしよう。きっと怒られる。呆れられている。怒鳴られる。あ、でも、助かった。助かったんだ。たぶん。
「おい、大丈夫か? 分かるか?」
怒りに歪んでいたおそ松さんの顔がふっと優しくなった。屈んで私を覗き込む。