第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
《愛菜side》
ドアが閉まった瞬間、私は床にへたり込んだ。頭の中がフリーズしている。
一人きりに戻ると、家の中は妙にシンとして居心地が悪く感じられた。
とりあえず、どうしよう……。
一気に疲れが出てくる。色々考えるのは後だ。まずは、シャワーを浴びて、落ち着こう。きっと、こういう時こそ、いつも通りの行動をする方がいいんだ。
私はバスルームに入り、すぐに熱いシャワーを浴び始めた。
窓から覗かれていたという事実。恥ずかしいけれど、もうどうしようもない。それより、これからの問題だ。
「明日から気をつけよう……」
独りごちながら、シャワーを止める。温まったせいか、体の緊張も取れ、不安も消えていた。多少、頭もスッキリしたようだ。
ようやく落ち着いた私は、上下の下着だけをつけ、タオルで髪を拭きながら、何か飲もうとキッチンへ向かう。
1階に住んでいたら、こういうこともあるよね。でも、覗きなんて見られただけだし、これからはちゃんと鍵も閉めるし。うん、大丈夫大丈夫。
その時。
コトンと微かな音が耳に入った。
何?
私は部屋の方を振り返る。
何も聞こえない。電化製品の重低音だけが響いている。
気のせいか……。
ホッとして息を吐き、キッチンの方へ向き直った瞬間、後ろから誰かに口を押さえられ、乱暴に抱き締められた。
「っ!?」
何が起こったか分からない。心臓がひゅっと冷たくなる。私は振りほどこうと必死に暴れた。
誰? 松野さん?
抵抗しながら、口を押さえる手を無我夢中で掴み、引き剥がそうとしてみる。
だめだ。離れない。
下を向いた瞬間、自分と相手の足が目に入った。
見覚えのない汚い黒い靴下。
松野さん……じゃない……。