第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
「え……?」
「そりゃ、変な男が覗きにも来るよ。まぁ、俺も……覗きこんではいないけど、実際、見には来てたし……」
「は?」
彼女がギョッとしたような顔をする。
あ〜、だからさっさと帰ればよかったんだ。そしたら、『覗き魔を教えてくれた親切ないいお兄さん』で済んだのにさ。また、これ、気持ち悪がられて、嫌われるパターンだろ? 上手く行かねぇ。
「だから! その、なんて言うの? 前に、たまたま道歩いてたらさ、おねーさんの部屋に明かりがついてて、着替えてるの見かけちゃって。それが服脱いでくところとかバッチリ見えちゃって、カーテン開けたままなのに、下着まで平気で全部脱いじゃうし、『うわ、やべっ』て思ったんだけど、あまりにも堂々と着替えてるから……」
「嘘……外から見えてたなんて……」
彼女の顔がみるみる青くなっていく。
「いや、ホント。丸見え。なんかおねーさんのその姿が忘れられなくてさ。この道よく歩くようになって……いつもじゃないけど、たまに見えちゃって、その……ラッキーみたいな」
「…………」
俺は慌てて手を振った。
「あ、いや、覗いてないよ? 覗いてないからっ。不可抗力っていうか、窓から見えちゃってるだけだから! むしろ、勝手に見せてきてんのそっちだから!」
「は、はい……」
理解してるのかしてないのか、彼女は素直に頷く。
「んで、今日もこの道通ったら、変なおっさんが窓覗いてて、何か頭にきちゃってさ。よく考えたら、やってることは同じなのに。なんかおねーさんの裸をあんなやつが見てると思ったら、どうしても教えたくなっちゃって」
「そうだったんですね……」
彼女は静かに返した。怒ってくる気配はない。まあ、何と答えていいのか分からないだけかもしれないが。