第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
お? やっと分かったか……?
押さえる力を少し弱めると、彼女は俺を見上げた。明らかに目が『変な男? それは、あなたでしょ?』と訴えている。
いやん、そんな可愛い顔して睨まれたら、お兄ちゃん、ゾクゾクしちゃう! ……じゃなくて、ちゃんと説明しないとね。
俺は彼女から手を離した。
「知り合いじゃないよね? 背が低くて、小太りで、メガネしてる男。おねーさんの部屋を窓から覗いてるよ?」
「え? 今……?」
疑わしそうに返す彼女。
「今。道歩いてたら、変な動きしてるおっさんがいて、気になって見てたらさ。窓の下に何か台みたいなの置いて、ここの部屋を覗いてたから。注意しに来たんだけど」
「ほ、本当に……?」
「うん」
あまりに驚いたのか彼女はそのまま呆然と立ち尽くす。次の言葉も出てこないようだ。
ま、そりゃそうか。いきなり言われても困るよな。んじゃ、仕方ねぇな。
「ちょっとさ〜ごめんね〜。お邪魔しまーす」
俺は靴を脱いで、さっさと上がり込んだ。廊下を通って一直線に部屋に向かう。
「え? ちょっと、勝手に……待っ……」
彼女が慌てて後を追いかけてくる。俺はそのまま、部屋に入り、勢い良く窓を開けた。
「おい、おっさん! 俺の女の部屋覗いて、何してんだよ!!」
叫ぶと同時に、「うわぁ!」と野太い悲鳴。続いて台が倒れ、尻もちをつく音。
窓から乗り出し下を覗き込むと、小太りの男が大慌てで逃げていくのが見えた。
「嘘……」
彼女が口を手で押さえ、呆然とする。
「な?」
振り向くと、素直に頷いた。
「あの、松野おそ松さん、でしたっけ? ありがとうございました……」
「いいって、いいって!」
俺はへへへと鼻の下を擦る。