第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
「っ!? あ、あのっ!?」
彼女が驚いて後退る。
俺はしぃっと人差し指を自分の口に当てた。
「いきなりごめんな〜。でも、どうしても話したくて」
「え? え?」
「あ、ちゃんとした自己紹介まだだったね。俺、松野おそ松! 近所に住んでんの」
「え? 隣に引っ越してきたんじゃ……?」
混乱してるんだろう。彼女は困ったように目を泳がせる。
「あ〜引っ越してきたってのは嘘」
「ええっ!?」
瞬間、彼女は後退り、部屋の中に走って行こうとした。たぶん携帯でも取りに行く気だな。俺は彼女の腕を引っ張った。
「ねぇ、ちょっと待って。おねーさん、話、聞いて」
「い、いや! 離して」
彼女が腕を必死に振りほどこうとする。
「離すから、ちょっと落ち着いて」
「ひぃっ! いやぁ! 殺されるっっ!!」
パニック状態なのか、大声で叫んで暴れる彼女。
あ〜もうっ! 仕方ねぇ。
俺は、舌打ちをすると、彼女を後ろから抱き抱え、口を手で押さえた。
「んーーーー!!」
「ちょっとおねーさん、いいから落ち着いて! 俺、変なことしないからさ、あんたに話をしにきただけなの!」
「んーーんーーんーー!」
「俺は注意しに来てあげたのっ! おねーさん、変な男に部屋覗かれてるよ?」
彼女の動きがピタリと止まる。