第16章 俺はキミを覗きたい【おそ松】
《おそ松side》
俺は震える指で、インターホンを押した。
平日夜9時。
近所のマンションの1階の部屋の前。
やべぇ、緊張する……。深呼吸して息を整える。
しばらく待っていると、ドアの内側でゴソゴソと音がした。たぶん、今、ドアスコープからこっちを伺ってんだろう。
「あの……どちら様ですか?」
ドア越しにかけられる可愛らしい声。
まずは開けてもらわなきゃ意味がない。俺は、咳払いをすると、できるだけ自然を装った。
「あのー、夜分にすみません。隣に引っ越してきた松野ですけど。日中何度か伺ったんですが、お留守だったみたいで」
って、女の一人暮らしが、こんなんで開けてくれたら、誰も苦労しないよな〜。ったく、何やってんだか、俺も……。
そんなことを考えて溜息をついた瞬間、目の前のドアが開いた。
仕事から帰ってきたばかりなんだろう。ドアを開けた彼女は、白いブラウスにスカート。着替えの途中だったらしく、胸元のボタンがいくつか開いている。
おいおい、さすがにヤバくね? 何で隠さねぇの? 男のサガってやつで、ついつい目がいってしまう。俺が無防備な胸元を眺めていると、彼女は困惑した様子で俺を見る。
そりゃ、そうだ。夜に知らない男が訪ねてきて、いきなり胸をジロジロ見てくるなんて、いい印象なわけはない。ま、とりあえず、笑顔があれば何とかなるよな。俺は彼女に笑いかけた。
「どーも! 松野です」
必要以上に元気よく挨拶をすると、向こうも釣られたように「はぁ……」と間抜けな返事をする。
俺は、素早く玄関の中に入ると、後ろ手でドアを閉めた。