第15章 狼なんかこわくない【トド松/学生松】
トド松くんの唇は、温かくて、少しだけ塩の味。
……当たり前か。私が泣いているせいだ。
控えめに重ねられた優しい唇、静かな息。嘘なんて微塵も感じられない。伝わってくるのは、トド松くんの一途な気持ちだけ。
「ん……っ」
トド松くんが顔を傾け、ゆっくりゆっくりと唇を滑らせる。繊細で柔らかい唇は、今にも壊れてしまいそうで、私は少し不安になった。
息を潜めて唇を吸い、舌が「開けて」と遠慮がちに歯を突付いてノックする。
口を開けないでいると、しばらく迷ったようにウロウロと唇の上を彷徨ったが、やがて諦めたのか、トド松くんは舌を引っ込めた。
「ふふっ……」
あまりに慎重なキスに思わず笑ってしまう。
「もう! なに?」
唇を離したトド松くんが睨んできた。
「ごめんごめん。慣れてない感じが可愛いなと思って」
「あー! ハイハイ、悪かったですねぇ! 慣れてないキスで」
「怒らないでよ。褒め言葉だよ?」
「男としてのプライドが傷付いた」
そっぽを向いて頬を膨らませるトド松くん。私は彼の頬を両手で挟んだ。
「もう1回しよ?」
「え、でも、愛菜ちゃ」
私から唇を塞ぐと、今度はトド松くんが感じる番。
唇を濡らすように舐め、二人の舌を絡ませる。
「ん……ぅんっ……ん……んんッ……ぁ」
あんなに恐る恐るだったのに。
一度ついたら途端に燃え広がる野火のよう。
夢中になって口づけを交わした。