第15章 狼なんかこわくない【トド松/学生松】
「どしたの? 先生」
「え? あ、何でもない……」
「ああ、もしかして、ベッド? ボクが使っちゃってよかったの? ボクなら床で寝ても平気だよ?」
「違う違う! 使っていいよ! 私が床に寝るから」
トド松くんは起き上がり、名案を思いついたとでも言いたそうな顔をした。
「ねぇ、先生! それか一緒にベッド使う?」
「それはやめとく」
即回答する。
「あ〜、やっぱり襲われるって思ってるんだ」
「思ってないけど!」
「いや、襲われると思うよ」
急にトド松くんの顔から笑いが消え、じっと私を見つめた。
「え……?」
「大好きな先生と一緒にベッドで寝たら、ボク何するか分かんない。触りたくなっちゃうし、抱きたくなっちゃう。だから、やめとくのは正解だよ」
トド松くんの真っ直ぐな目。私はどぎまぎして俯いた。
「襲わないって言ったでしょ……」
「うん。襲わないよ。でも、抱きたいって思っちゃうのは感情だから仕方ないでしょ?」
「一緒に寝るって自分から言い出したくせに」
トド松くんが頬を赤らめた。
「うん、まあ、それは……。もしかしたらいいよって言うかなと思って……試しに言ってみた」
恥ずかしそうに俯くトド松くんは、すごく可愛らしい。
「先生さ、ボクのこと迷惑って思ってるんでしょ? さすがに分かってるよ。本当は、今日、先生の家に泊めてもらって、最後に色々話をして、それでもう諦めようと思って待ってたんだ……」
「え……」
思いがけない言葉に私は呆然とトド松くんを見た。