第15章 狼なんかこわくない【トド松/学生松】
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シャワーを浴び終えたトド松くんは、ベッドの縁に腰掛け、さっき買ったほうじ茶を飲んでいた。
ラフなTシャツにジャージ姿。ちゃっかり家から着替えを用意してきている辺り、さすが抜け目がない。
「トド松くん、もう遅いからそろそろ電気消すよ?」
私はハムスターのケージに餌を入れながら、声をかける。
トド松くんはベッドに寝転がった。
「先生、女性の一人暮らしでハムスター飼ってるってなんか淋しいな〜。いかにもカレシいないって感じ」
「何、その偏見!? ハムちゃんとの時間が、仕事終わった後の唯一の癒やしなんだからね!」
「いや、それが淋しいって言ってるんだけど」
私はハムちゃんの頭をチョンチョンと指で撫でた。何とでも言えばいいよ。ね、ハムちゃん?
「トド松くんの家はペット飼ってないの?」
「ん〜? 飼ってるよ。5匹の行儀の悪いエロ猿。おそ松、カラ松、チョロ松、一松、十四松……」
「それは、お兄さんたちでしょ」
「ま、ボク以外はみんな動物みたいなもんだよ」
トド松くんは仰向けになると、スマホを弄り出す。見慣れた制服姿とは違い、半袖Tシャツの袖から伸びた腕は、意外にも筋肉がついていて、彼が男の子だということを思い出させた。
家の中に男性がいて、しかも私のベッドに寝転がっている――改めてその事実に気づくと、なんだか緊張する。
私の視線に気付いて、トド松くんは不思議そうに首を傾げた。